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恵方巻きのルーツは?

 「恵方巻き」とは、節分(立春前夜)に、新年の恵方を向いて、巻き寿司1本を食べるという呪術的行為。縁起かつぎのおまじない、です。
 
 SUSHIは国際的な食べ物になったけれど、現在、SUSHIとして広まっているのは、おもに握り寿司。しかし、太巻き寿司は握り寿司とは異なります。海苔(Brack Paper)で、寿司飯と具を巻いたもの。「SUSHI ROLL」。手巻き寿司のようなゆるい巻き方ではなく、きっちりロールケーキ風に巻く。そして、ロールケーキのように切っていただく。生ものを使っている握り寿司に比べ、保存が効き、田舎のハレ(特別な日)の料理としてかかせない料理。
 とまあ、帰国子女、留学生向けの記述はこれぐらいにして・・・。
 
 まずは「恵方」ってナニ?という疑問から。恵方とは、歳徳神のやってくる方位。カンタンに説明すると吉方です。それも新年の吉方位。良い方位を向いて、物を食べれば、その幸運を取り込むことができる、というわけ。初詣も、本来は、恵方に詣でる行事だったといいます。というわけで、新年、つまり元旦に恵方を向くという縁起かつぎも古くから行われていました。
 え?元旦って1月1日でしょ? そう、それはグレゴリオ暦の新年。でも東洋の暦では、立春も新年なのです。つまり、異なるサイクルの暦による2つの新年が日本にはある、と考えてください。
 
 そして、なぜか恵方巻きは、節分に行う。節分、立春前夜、立春イブ、ある意味、大晦日。恵方巻きは、前夜のうちに新年の福を先取り、という気の早い行事なんです。
 
 恵方巻き、日本人ならみんなやるのだろうと思われてしまいそうだけど、そんなことはありません。なぜなら、「恵方巻き」発祥は、江戸時代から明治にかけての大阪船場という説が有力。恵方参りは古くからあるけれど、恵方巻きは、近代もの。商売繁盛を願った風習で、おもに大阪の花街で流行りだしたといいます。なるほど、気の早い行事という理由はそこにありますね。
 想像してみてください。節分の賑やかさの中で、おちょぼの口の芸妓さんたちが、巻き寿司にかぶりつく姿。巻き寿司は、切ってはいけないという制約があるため、かぶりつく。「ほれ、もっと口を大きく開けてかぶりつかなきゃ」「あ〜ん、いややわ〜、堪弁しておくれやす」などという会話は、それだけで一興、というものでしょう。
 
 とにかくこれ、上方の風習なんです。(注・上方とは、関西、大阪、京都のあたり)
 だから、恵方巻きは、関東人にはほとんど馴染みがないイベント。(注・関東の中心は東京のあたり、と思ってください。なぁんて書くと、関東人から反発されそうですが。ところで、秋葉原は東京にありますので関東です。)
 しかし、「恵方巻き」というイベント性のある食べ物を販売しようと、最近、(おもに1980年代から1990年代にかけて)、関東のコンビニやスーパーでも販売し始めたので、「ふ〜ん、そんなものがあるんだ」と、関東人にも広まってきた、という経緯です。
 
 恵方を向いて願い事。恵方を向いて丸かじり。恵方を向いて深呼吸。まあ、なんでもいいんです。季節性のある食べ物を、普段はやらないような方法で食べろと言われると、なんかご利益ありそうな。つまり、祈願呪術です。
 
 巻き寿司といっても、昔は、新香巻きだったといいますから、せいぜいが中巻き程度だったのではないでしょうか。新香、つまり漬物。たくあん、芝漬け、キュウリの古漬け、などなど。
 それが時代と共にだんだん豪華になってきて・・・。最近は、7種類の具を入れるといい、という説があるそうです。ラッキー7ですね。そういえば、12種巻き、なんていうのも近所のスーパーにあったわ。
 とりあえず、色を5色、揃えましょう。といっても、海苔が黒、ゴハンが白。だからあと3色揃えれば5色に!
 

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 たとえば以下のようなものから、好きなものを3つ選べばいいんです。
 緑→みつば、キュウリ
 黄→玉子焼き、干瓢、煮あなご
 赤→紅しょうが、かにかま、さくらでんぶ
 
 きっちり巻くには、すだれが必要なんですが・・・。すだれ、なんて説明すればいいのでしょう。かなり日本的な台所用品だなあ、これは。まあ、布巾やラップを使って巻くワザもありますが、巻きには慣れが必要なので、出来合いを買ってしまう人が多いみたいですね。
 「切らずにかぶりつく」という行為ですが、「そりゃそうでしょ、手巻き寿司なんだから」と自称日本通のNちゃんが言っていましたね。だ〜か〜ら〜、そうじゃなくて。ま、いいっか。
 
 さて、 恵方は、万人共通のその年の吉方位です。
 恵方は、その年の干支によって決まります。節分の日の行事なのですが、節分の日の恵方ではなく、立春からはじまる新年の恵方をとるのです。
 ただし、ここで注意すべきは、恵方は、気学のお水取りの方位とは異なる、という点です。 (私、かつて「今年の吉方は××」と気学の吉方位を告げる家人に、「あれ?スーパーに書いてあった恵方と違ってるじゃん」と言って、家人を怒らせたことがありますので。)
 この時、方位磁石などを持ち出す方もおられますが、まあ、南を向いて食べればいいのではないでしょうか。
 
 豆まきと恵方巻き、どちらが先?と聞かれたことがあるんですが・・・たぶん豆まきが先でしょう。鬼を追い払ってから恵方巻き、という順序。あ、そうそう。節分にはね、豆とメザシ(イワシの干物)も食べるんですよ〜。

秋月さやか


参考文献:方位事典(山田安彦 編 柏書房)

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