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筆者エッセイ

ダークムーンリリト、願望としての前世

 1991年10月、「前世を知るリリト占星術」の本が世に出ました。もう18年前のことになります。Lilithはリリスと発音すべきなのですが、月の遠地点にもリリスという名称が用いられるため混乱することが多く、私はダークムーンにはリリトの名称を用いました。(正確にはリリスである、という指摘をいろいろな方からされています。故ルルラブア氏、流智明氏、早崎郁男氏には、参考文献のことで大変お世話になりました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。)
 リリト占星術は1994年、「探索前世占星術」として中国語にも翻訳されました。その際、リリトには「莉莉糸」という当て字が用いられました。(注・糸は正確にはヘンつくりとも糸を重ねた漢字)。前世と現世を結ぶ糸のイメージもあり、この当て字は私も気に入っています。

 1991年から18年。そろそろ、ドラゴンヘッドがひと巡りするサイクルです。
「目に見える物や現象だけが、この世界を創り上げ、支配しているわけではありません。ひとつの物事が起こる影には目に見えないたくさんの原因があり、それらが影響しあって、ある出来事を引き起こすのです。その原因とは・・・潜在意識内の願望、宿命的な記憶。」私はかつて、リリト占星術の前文に、そのように記述しました。
 が、その時には、ダークムーンリリトについて完全に理解できなかったことがあり、ずっとそれが私の中でのわだかまりになって、私はダークムーンリリトを、一時、封印していました。しかし、その疑問に対する結論のようなものをようやく見出すことができたため、改めて、ダークムーンリリトを復活させることにしたのです。18年前に出版したオリジナル自著文章を元に、さらに進化したダークムーンリリトφを皆様にお届けしたいと思います。
 ダークムンリリトは、φ(ファイ)という記号であらわされます。そう、φとは空集合の記号。ただし、ダークムーンリリトはボイドとは違います。実体はありませんが、かといって、からっぽではありません。そこには闇があるのです。闇の中を探り当て、そして見つけ出すもの、それがそれがダークムーンリリトです。闇とは、光が遮られて生じるものです。それはただ光がないだけの状態なのだろうと思われがちですが、そうではありません。光が遮られたからこそ、闇の中で見えてくるものがあるのです。空白だとばかり思っていたのに、闇に覆われることで、そこに生じる何か。光を当てると、とたんに、消滅してしまう何か。それがダークリリトに象徴される意識なのです。

 なぜ自分は今ここにいるのか、なぜこのような人生を生きているのか。誰でも、一度ぐらいはそのような問いを自分自身に発したことがあるのではないでしょうか。占術を扱っている私は、いろいろな人から、そのような問いかけをされました。でも、私はその問いにお答えすることができません。「占いをしているのに、そんなこともわからないなんて。」と編集者に言われたこともありますが。(占いは、すべてに答えを出してくれる便利ツールではないのですけれどね。)
 であれば、自身でその問いと向き合ってみてはどうでしょう? 私がダークムーンリリトを提案したのは、それが始まりだったのです。理不尽な運命選択の答えを探したいのなら、自身の心の闇と向き合うべきだからです。その闇の中にあるのはいったい何なのか。前世の記憶なのか、遺伝子の選択パターンなのか、はたまた選択されなかった運命の強制力なのか。もしもその原因が、前世の記憶にあるのなら、いずれ納得する答えを自身で見つけられるに違いありません。抑圧された意識に翻弄されているのであれば、その流れの正体を知る手がかりが欲しいでしょう。選択されなかった運命の叫びなら、その叫びと向き合ってみるべきです。

 ですが、その答えは、まさに自身の心の中から見つけるものでしかありません。自分自身で、心の闇を覘くしかないのです。それが前世の意識なのか、それとも遺伝子の記憶なのか、それとも、あなたの心の中の抑圧された願望なのか。それは私にはわかりません。しかし、そのいずれであったとしても…やはりそれは自分の心の中にある物語には違いなく、ですから、その願望を知ることは、決して無意味なことではない、私(秋月)はそのように考えています。

 私自身は、前世があるのかないのか、いまだにわかりません。が、たぶん、前世とは、それ自体が願望なのです。そして、人々の前世願望は少しずつ形を変えてきています。かつて、リリト占星術の本を世に出した頃、前世とは「もうひとりの自分を求めて(拡大していた)意識」でした。しかし、今、人々は、「曖昧な自分自身を、前世という宿命によって限定したい(収縮に向かう)意識」へと変化しているように感じられます。

秋月さやか

( 2009/04 )


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