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筆者エッセイ

マヤ暦終焉とエクリプス

 暦とは、天の時を知るために作成されたもの。いつ春が来るのかを知らなければ、作物の種を蒔くことは出来ず、いつ冬が来るのかを知らなければ、冬篭りの準備をすることができなかったので、暦は生活の必需品でもありました。
 しかし。暦を作るというのは、古代においてはかなり大変なことだったのです。暦を作るには天の運行を知らなければなりません。天の運行を知ることができて、地上の季節の移ろいを知ることができる、つまり地上を治めることができるわけです。
 古代中国の皇帝は、年のはじまりである冬至の儀式で暦を配布しましたが、これが、天の時を知り、地上を支配する皇帝たる証でした。
 
 簡単に言うと、暦が世界を支配する、ということ。たしかに、民族文化と暦は切っても切れない関係性にあります。暦は年中行事を行う上で重要なもので、実際、現代日本では、旧暦の行事日をグレゴリオ暦で無理に行っているために、ちょっとおかしなことになっている場面も多々あるのですが・・・。

 さて、古代の暦は、冬至、夏至、春分、秋分。まずこの4つの時の基準を知り、そして1年間の周期を見極めることから、でした。
 春分、秋分の日、太陽は真東から昇り、真西に沈む。北半球においては、冬至が昼の時間が最も短く、夏至では最も長い。地上と天空が対応しているこの4点においては、そのルールは昔からずっと変化していません。はっきり言って、暦はこのシンプルなスタイルでよかったはずなのです。
 とはいうものの、天には、太陽以外にもいろいろなものがありました。まず月。月の満ち欠けの周期は、眺めてわかりやすい。しかし、これほどやっかいなものもありません。月の満ち欠けを基準にした暦は、このうえもなく複雑な構造になっていきます。
 次に星。星空と太陽の周期に合わせて作成する暦は、一見、月の暦ほどやっかいではありません。星はまるで天空に張り付いたようで、これは素晴らしい!と、そのように思えるわけです。しかし、そんなうまい話ではありませんでした。長い年月で見た場合、星はよけいに難解な問題を生み出してしまいました。まあ、この関連についていろいろ書こうと思うと、ページがいくらあってもたりないので、ここではやめますが・・・。
 

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 さて、複雑な暦は、1年という時の単位よりも、もっと長い単位の暦の周期をも生み出しました。その暦周期は、あるひとつの時代の周期と対応する、そのように人々は考えたのです。
 時に対応して生まれた人々の運命を占うことができるわけですから、暦の周期に従って世界の運命周期も占える、と、まあ、そういうわけ。たしかに、時によって世界が変化していくことはあるでしょう。
 その代表は、春分点の歳差移動によるプラトン大年2万5千8百年。春分点がひとつの黄道星座を通過する2160年の大月が、大きな時代の変化をあらわすというもの。しかし、プラトン大月の2160年は12星座をひとめぐりしても終わりません。螺旋回帰によって、永遠に繰り返される構造なのです。
 しかし、ひと巡りがそのまま世界の終焉の時に関連して考えられる暦もあります。
 
 それが今、話題になっているマヤ暦の終焉。
 マヤ暦は、13と20の組み合わせで出来上がっています。これは、20進数(手と足の指を全部足して20)を用いていたことに関連しているのですが、トナルポワリと呼ばれる占星術暦の1年は、20×13で、260日。シウポワリと呼ばれる農業暦は、20×18ヶ月間に、閏日の5日間を足して、1年間が360日。そして占星術暦と、農業暦の始まりが一致する周期は52年ごと。
 さらに、もっと大きな時の周期というのがあって、その単位が5200年。5200年ごとの周期が5回繰り返されると世界は滅ぶ、というのがマヤの時の終焉伝説です。世界は現在、最終期の第5期にあり、その第5期は地震によって滅ぶ、という予言がなされているのだとか。ちなみに、第5期の始まりは前3114年。そして2012年12月21日が第5期の終焉。
 というわけで、映画も作成されましたようで、盛り上がっていますね。
 
 西暦という暦は、千年単位で、世紀末伝説を生み出しました。しかし、そのノストラダムス予言を乗り越えた地球は、まだまだ大丈夫だと、私は思います。
(ノストラダムスの映画は、昔、試写会で観ました。かなり良く出来ている映画で、役者さんもよかったのですが、ラストがどうもよくわかりませんでした・・・。)
 
 古代において世界の終焉と恐れられたのは、暦の終りではなく、日蝕、月蝕でした。いきなり欠けてしまう太陽の光。そして満月の晩に、急に暗い色に変わっていく月の姿。その光が再び蘇るのだろうか、このまま闇に飲み込まれたら世界は終わってしまうという不安。
 古事記における天岩戸隠れは、日蝕のことを意味しているとされます。その他の世界神話でも、いろいろな形で日蝕や月蝕のモチーフが登場します。そしてエクリプス(蝕)を生み出すドラゴン、あるいは狼(フェンリル)。
 エクリプス(蝕)を正確に予言することが、暦作成に求められた時代もありました。昔、蝕の予言を巡って、日本の宮廷に仕えていた陰陽寮と、巷の宿曜師の対決などもあったようです。が、今は、手軽にエフェメリスを見て占えるのですから・・・昔の陰陽師や占星術師たちからしたら、夢のような話ですね。

秋月さやか


参考文献:
 「大予言者を科学する」ラインハルト・ムシク著 渡辺広佐訳 翔泳社
 「古天文学の道」 斉藤国治著 原書房

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