筆者エッセイ
ガラケーの小鳥たち
我が家の庭先には、小鳥たちがよくやってくる。さすが標高1000m、日本三大野鳥生息地の一角。ベランダにヒマワリの種を置き、鳥の図鑑を片手に窓から鳥を眺める、午後のひと時。来訪者のほとんどはガラケーの小鳥たち。ガラケー。それはいわゆるカラ系と鳥ウォッチャーたちが呼ぶ鳥たちのことなのですが。
つまり、シジュウカラ(Great Tit)の仲間たち、コガラ(Willow Tit)、ヤマガラ(Varied Tit)、ヒガラ(Coal Tit)、それにゴジュウカラ(Nuthatch)を加えて、カラ類の鳥たち、と鳥に詳しい人たちは呼ぶそうです。語尾にカラが付くから。
その代表はシジュウカラ。すばしっこく、飛び回り、囀る鳥。庭先に掛けた巣箱で毎年子育てをしてくれますが、適当な巣箱が見つからないと、郵便ポストの中に巣を作ってしまう、なんていう話をたまに聞きます。
コガラは、集団グループで飛来、みんなで一斉に木に止まり、しばらく木をつついた後に、また一斉に飛び立っていきます。枝から枝を飛び回り、首を傾げながらこちらを見る、そのしぐさがとにかく可愛い。
ヤマガラは、黒白グレーに、鮮やかなオレンジ色の胸毛が印象的で、体も大きく、人懐っこい。ご近所の喫茶店では、ヤマガラに餌付けして手乗りにしたそうです。庭先の巣箱に巣を作りますが、シジュウカラと巣箱の取り合いをしていることもあります。
ゴジュウカラは、シジュウカラに似ているけれど、警戒心が強く敏捷。木の幹を下向きに歩きながら降りていくという芸当のようなしぐさが有名ですが、動きが早いので、その姿をじっくり見たことがありません。
カラ類の小鳥たちは、留鳥で、里山にいますから、バードウォッチングの対象として最適なのです。
シジュウカラは四十雀と書きます。群れる鳥なので、40羽ぐらい連れ立っているからシジュウカラなのか、と思ったのですが、しじゅう鳴いているからシジュウカラ、あるいは、鳴き声がシジュウーと聞こえることから来ているのだそうです。
が、なぜ雀と書いて、カラと読むのか? カラ類は、スズメよりもやや大きかったり小さかったり。分類上はスズメ目ですが、でも雀ではありません。カラとは、古代、小鳥を意味する言葉だったといいます。つまり古代、木々の間を軽々と飛び回る小鳥たちに与えられた呼び名がカラ。語感からは、風がカラカラと回す風車や、ふわっと軽やかに風に乗る木の葉や羽のイメージが浮かんできます。「軽ろい」「軽るい」…あたりから「かる」「かろ」「から」になったのでしょうか。
古代においては、いちいち鳥の名前など詳しく付けてはいなかったわけで、シジュウカラもヤマガラもヒガラも、「カラ」と人々は呼んでいたのでしょう。
しかし、カラ類にもいろいろいることがわかってくると、シジュウーカラ、ヤマガラ、などという固有の呼び名がつけられるようになります。そこに漢字を与える際に、雀に近いから雀という文字をあてればいいんじゃないか、ということになったのかも知れません。小鳥、つまり燕雀の類という意味で。
といっても、一般的に見かける小鳥の代表のような鳥、スズメは、はっきりカラ類とは区別されます。つまり、スズメには万葉の時代から、スズメという呼び名が与えられていました。(チュ、チュ、と鳴くもの、という表現が転じてスズメと呼ばれるようになったとか。メは、たくさん群れる生き物や、小鳥を意味する言葉。)そしてスズメは民家の近くに住む鳥で、あきらかにカラ類とは行動が異なっている鳥でもあります。
さて、鳥は夫婦仲がよい、と信じられています。一度相手を決めると終生変えないのだとか。たしかに鳥たちの約9割は一夫一婦制。カラ類もほとんどがそうで、ヤマガラは夫婦仲の良さで知られた鳥ですし、ゴジュウカラもつねにカップルで行動します。
シジュウカラの場合には、春先にカップルになると、子育てが終了するまでは相手を変えません。しかし秋から冬にかけては(よほど仲の良いカップルは別として)、昼は集団で暮らし、夜はひとり暮らしなのだそう。そして次の春になるとまたカップルになるわけですが、この時、1割ほどは、別の相手を探すのだそうです。たしかに、パートナーの選びなおしが必要な時もあるのでしょう。
正確にはシジュウカラ、ゴジュウカラと発音するのですが、でも、シジュウガラ、ゴジュウガラと発音する人もいます。だいたい、カラ類というより、ガラ類といったほうがわかりやすいかと。そう、まさに、ガラ系の小鳥たち。小さくて、軽くて、可愛くて、歌も上手。
ところで、日本の携帯端末は、小さくて高性能で、大変使いやすい。まさに、軽くて、可愛くて、歌も上手。手紙も届けてくれたり、情報や映像をキャッチしたりもしますね。島国で独自進化を遂げた携帯端末なので、ガラパゴス携帯と呼ばれ、最近、略してガラケーと呼ばれているんですよ。
参考文献:
原色日本野鳥生態図鑑 中村登 保育社
野鳥ガイド 唐沢孝一 新星出版社
鳥のおもしろ私生活 ピッキオ編著
写真:自宅ベランダにて撮影
つまり、シジュウカラ(Great Tit)の仲間たち、コガラ(Willow Tit)、ヤマガラ(Varied Tit)、ヒガラ(Coal Tit)、それにゴジュウカラ(Nuthatch)を加えて、カラ類の鳥たち、と鳥に詳しい人たちは呼ぶそうです。語尾にカラが付くから。
その代表はシジュウカラ。すばしっこく、飛び回り、囀る鳥。庭先に掛けた巣箱で毎年子育てをしてくれますが、適当な巣箱が見つからないと、郵便ポストの中に巣を作ってしまう、なんていう話をたまに聞きます。
コガラは、集団グループで飛来、みんなで一斉に木に止まり、しばらく木をつついた後に、また一斉に飛び立っていきます。枝から枝を飛び回り、首を傾げながらこちらを見る、そのしぐさがとにかく可愛い。
ヤマガラは、黒白グレーに、鮮やかなオレンジ色の胸毛が印象的で、体も大きく、人懐っこい。ご近所の喫茶店では、ヤマガラに餌付けして手乗りにしたそうです。庭先の巣箱に巣を作りますが、シジュウカラと巣箱の取り合いをしていることもあります。
ゴジュウカラは、シジュウカラに似ているけれど、警戒心が強く敏捷。木の幹を下向きに歩きながら降りていくという芸当のようなしぐさが有名ですが、動きが早いので、その姿をじっくり見たことがありません。
カラ類の小鳥たちは、留鳥で、里山にいますから、バードウォッチングの対象として最適なのです。
シジュウカラは四十雀と書きます。群れる鳥なので、40羽ぐらい連れ立っているからシジュウカラなのか、と思ったのですが、しじゅう鳴いているからシジュウカラ、あるいは、鳴き声がシジュウーと聞こえることから来ているのだそうです。
が、なぜ雀と書いて、カラと読むのか? カラ類は、スズメよりもやや大きかったり小さかったり。分類上はスズメ目ですが、でも雀ではありません。カラとは、古代、小鳥を意味する言葉だったといいます。つまり古代、木々の間を軽々と飛び回る小鳥たちに与えられた呼び名がカラ。語感からは、風がカラカラと回す風車や、ふわっと軽やかに風に乗る木の葉や羽のイメージが浮かんできます。「軽ろい」「軽るい」…あたりから「かる」「かろ」「から」になったのでしょうか。
古代においては、いちいち鳥の名前など詳しく付けてはいなかったわけで、シジュウカラもヤマガラもヒガラも、「カラ」と人々は呼んでいたのでしょう。
しかし、カラ類にもいろいろいることがわかってくると、シジュウーカラ、ヤマガラ、などという固有の呼び名がつけられるようになります。そこに漢字を与える際に、雀に近いから雀という文字をあてればいいんじゃないか、ということになったのかも知れません。小鳥、つまり燕雀の類という意味で。
といっても、一般的に見かける小鳥の代表のような鳥、スズメは、はっきりカラ類とは区別されます。つまり、スズメには万葉の時代から、スズメという呼び名が与えられていました。(チュ、チュ、と鳴くもの、という表現が転じてスズメと呼ばれるようになったとか。メは、たくさん群れる生き物や、小鳥を意味する言葉。)そしてスズメは民家の近くに住む鳥で、あきらかにカラ類とは行動が異なっている鳥でもあります。
さて、鳥は夫婦仲がよい、と信じられています。一度相手を決めると終生変えないのだとか。たしかに鳥たちの約9割は一夫一婦制。カラ類もほとんどがそうで、ヤマガラは夫婦仲の良さで知られた鳥ですし、ゴジュウカラもつねにカップルで行動します。
シジュウカラの場合には、春先にカップルになると、子育てが終了するまでは相手を変えません。しかし秋から冬にかけては(よほど仲の良いカップルは別として)、昼は集団で暮らし、夜はひとり暮らしなのだそう。そして次の春になるとまたカップルになるわけですが、この時、1割ほどは、別の相手を探すのだそうです。たしかに、パートナーの選びなおしが必要な時もあるのでしょう。
正確にはシジュウカラ、ゴジュウカラと発音するのですが、でも、シジュウガラ、ゴジュウガラと発音する人もいます。だいたい、カラ類というより、ガラ類といったほうがわかりやすいかと。そう、まさに、ガラ系の小鳥たち。小さくて、軽くて、可愛くて、歌も上手。
ところで、日本の携帯端末は、小さくて高性能で、大変使いやすい。まさに、軽くて、可愛くて、歌も上手。手紙も届けてくれたり、情報や映像をキャッチしたりもしますね。島国で独自進化を遂げた携帯端末なので、ガラパゴス携帯と呼ばれ、最近、略してガラケーと呼ばれているんですよ。
秋月さやか
参考文献:
原色日本野鳥生態図鑑 中村登 保育社
野鳥ガイド 唐沢孝一 新星出版社
鳥のおもしろ私生活 ピッキオ編著
写真:自宅ベランダにて撮影
筆者エッセイ > 筆者エッセイ ガラケーの小鳥たち
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