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占星解説 2022

2022年 春分図とマンデーン

「2022春分図からマンデーンを読む」

 アストロロジー(西洋占星術)においてマンデーン(社会現象)を占うには春分図が必須です。なぜ春分図なのかといえば、春分は12星座宮(サイン)の基点であり、年のはじまりを春分と考える文化圏においてアストロロジーが発達したため。(注・中国由来の旧暦の基点は冬至です。)
 春分の瞬間の惑星の配置は地上(全世界)共通ですが、各国家の首都における上昇度数は各々異なります。また、始原図(注・国家の成立時のチャート)を併せて用いることで、国家特有の現象を占断する場合もありますが、ここではおもに春分図について解説します。

春分図 Ari00 2022/03/21 00:35(JST)
  Spring Equinox   (国立天文台データ00:33)

上昇:Sag24/月:Lib29/水星:Pis17/金星:Aqu13/火星:Aqu10/木星:Pis18/土星:Aqu20/天王星:Tau12/海王星:Pis23/(冥王星):Cap28

 上昇は射手で、地上に見えているのは月だけ?! 月以外はすべて地平線下となります。
 月は、国民であり生活。となると、国民に期待される指導者が待ち望まれているということになるのでしょうか。消費者の味方、家庭や子育てにとっての環境を配慮する政治を切望する声は、ますます高まってくるでしょう。女性の指導者が期待され、子育て支援といったあたりが重要になるのかもしれません。
 しかし、国家の運営にはお金(財源)が必要です。月に対してのタイトなアスペクトは冥王星(準惑星)のスクエアです。スクエアだから凶というような単純な解釈ではありません。スクエアは、つねに世の中を変える原動力となります。となると、これはもう大規模な国債の発行でしょうか。国債は(おもに国民から、海外の投資家の購入も含めて)借金です。
 
 もしも冥王星が、古い利権をあらわしているとするなら、従来の利権の仕組みを(強引に)変えるという流れになります。遺産相続について、血縁=財産という部分を崩していくという流れは妥当でしょう。すでに戸籍も檀家制度もそれほど意味はなく、別姓に踏み切っても問題はなさそうです。マイナンバーが普及する結果として、個人が家族制度(もしくは血縁権威主義)の弊害から抜け出すことができるのであれば、その流れは歓迎したいと(個人的には)思いますが。
 
 あるいは、この月は(日本だけでなく)孤独死の問題をあらわしているのかもしれません。でも、死ぬときは誰だって孤独なのですが。最期を看取ってもらうためだけに、家庭内における感情依存や血縁がもたらすデメリットにずっと耐えているのだとしたら、それこそ無意味でしょう。家庭は、これまで誕生と死の現場として重要視されてきましたが、今や、誕生も死も、家庭内でのみ発生しているわけではありませんので。宗教は死後の世界に関しての共同幻想を与えてくれますが、しかし、その前に、現実世界での死の実態について考える必要があります。
 
 さて、冥王星(準惑星)を使用しないとするなら、月は土星と緩いトラインと判断することになります。月と土星のトラインは、経済活動が低迷している中での節約でしょうか。すでにして原油の価格は高騰し、インフレが予想されています。食料自給率の低い日本における状況は深刻で、食料品だけでなく生活必需品はすべて値上がりします。その結果、エンゲル係数が高くなるのは当然です。新品を作ることが難しい状況の中で中古品が役立ちますが、しかし、その修理は難しい状況ですので、ある意味での耐乏生活を覚悟しなくてはならないのかもしれません。「欲しがりません勝つまでは」ではなく、「欲しがりません作れるまでは」です。では、使い捨て文化は終わるのかといえば、コストに見合った使い捨ては以前としてありでしょう。生活必需品を、大資本が独占して扱う傾向はますます強まり、どこへ行っても効率的な規格品が並ぶ風景になりますが、それはそれで安心という人たちも多いでしょう。
 
 アセンダントルーラーは木星で、水星海王星とコンジャンクション。
 2022年に発生する特徴的なアスペクトとして、木星海王星のコンジャンクションがあり、約13年に一度のサイクルで発生します。前回、木星海王星のコンジャンクションが魚で発生したのは1856年3月頃でした。海王星の周期は約165年。これは天王星の約2倍の長さで、海王星が全天を1周する間に、天王星は2周します。
 1856年には、天王星は牡牛にあり、2022年の星の配置とかなり似ています。海王星が発見されたのは1846年、その発見から10年後。ヨーロッパでは、心霊術や興行催眠術が大流行していました。清では、太平天国の乱(1851年〜1864年)のさなかでした。キリスト教的な信仰を通して復古主義の理想国家を作ろうとした人々のクーデターでは、2000万人以上が命を落としたとされます。
 日本では安政年間にあたり、前年には安政の大地震。そして、1854年には日米和親条約によって、鎖国が終了(事実上の崩壊)します。
 勝海舟は長崎海軍伝習所でオランダ語と船の操作を学びながら船酔いに苦しんでいる頃で、坂本龍馬は江戸小伝馬町の道場で剣術の稽古をしながら、異国人を討ちとろうと考えていたようです。
 アジアではコレラが広まり、2年後の1858年には江戸でもコレラが大流行します。
 この頃、幕末の新宗教として有名な金光教の設立。金光教は、暦占の吉凶よりも信仰心を重視しますが、それほどまでに暦占の弊害が大きかった時代です。新宗教は、旧来の宗教の弊害から抜け出すための手段であり、それは、現代においても同様です。また、政治が混乱している時代にも新興宗教が出現するのはいうまでもありません。
 
 さて、現代は予測不能なVUCAの時代であるとされますが、これはV(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)、A(Ambiguity:曖昧性)の頭文字を並べた言葉で、未来の予測が困難になる時代であるとされます。
 予測不能な時代、人は何を頼りにするのでしょうか。たぶん、人を超えた大きな存在でしょう。人を超えた意思、すなわち神仏妖魔。この世界のさらに外側にあると思える大きな存在ですので、宇宙の意思とか天使とか宇宙人というような存在を考える人たちもいるようですが、まあ、アウトワールドの想像の世界には、なんだっているでしょう。
 政治は、本来は宗教と同様の役割を果たすものでした。信じる未来を与えてくれるものですから。ですが、政治に不安がある時代には、人々は、宗教にすがり、奇跡を願います。この世の外のアウトワールドの存在を頼ろうとします。ここにない誰か、です。宗教団体には、共同幻想を提供する場(しばしばあの世の)という役割だけでなく、政治では補えない精神的なセーフティネットとしての役割を果たす部分も(本来は)あったはずです。
 そういう意味では、スピリチュアルブームはあいかわらず続きそうですが、見えないもの(霊感)を語って人を操作するスピリチュアリティはあきらかに有害ですし、伝統宗教にもそのような弊害がないとは言い切れません。しかし、宗教そのものが、存在を証明できない神仏を信じるというところからはじまっているのですから、このあたりの矛盾を完全に解消することは難しいでしょう。占術にしても同様で、なにを信じ、なにを信じないのかは個人の判断に委ねられています。占いは当たるのか、と問われても、当たる確率を計算できるわけではありませんので、論外です。
 
 神仏(妖魔)に対する信仰は人ぞれぞれで、個人の責任において選択は自由ですが、宗教(スピリチュアリティ)は、基本的に共同幻想であるという部分については理解しておく必要があります。  政治(政治がめざす理想的な社会)も、宗教も、ナントカ理論も、木星海王星の意味する共同幻想から発生しているもので、いずれも形のあるものではありません。
 ですが、だからといって共同幻想にはまったく意味はないかというと、そういうわけでもありません。実際にその共同幻想が世の中を変えていくこともあるからです。共同幻想を現実と誤認することは愚かな間違いですが、しかし、共同幻想を実現しようとする人たちが、実際に現実世界を変えていくことはありえる、という部分は重要です。
 
 宗教は時代によって変化します。伝統宗教といっても、仏教もキリスト教も、それまでの宗教の弊害から抜け出すために発生しました。伝統宗教には、文化的遺産としての価値は残されていますが、すでにその役割を終えているように感じられます。実際、現在の日本において、新宗教(新興宗教)の教団数は400教団ほどあり、新宗教(新興宗教)の信者数は、日本人のおよそ1割いると推定されています。宗教団体にはなっていないスピ団体を含めると、もっと多いはずです。さらには、無宗教の人の割合も増えつつあります。
 木星海王星コンジャンクションによってどのような新たな流れが起こるのかといえば、さらなる多神教化と、これまで宗教が担っていた役割を果たす別な存在の出現でしょう。それがどのような形のものになるのかについての予想は難しいのですが、現実にはないものを信じ、それを他者と共有するためには、形(形式や儀式などのルール)が必要です。精神世界におけるコミュニケーションにおいて、儀式と象徴はなくてはならないもの。従って、(なんらかの精神的な作用を伴うと思われる)儀式によって精神的な成長(もしくは覚醒とか感覚の鋭敏化)をめざすという流れになるのかもしれません。精神的な成長(もしくは覚醒)が、たんなる内的な充足感に留まるのではなく、現実の人生に影響を与え、結果的に現実世界を変えていくことができるなら、神仏(もしくは教祖)不在の新たなスピリチュアリティの流れがやってくるということになるのでしょう。あるいは。バーチャルな世界での体験を通して、精神状態が変わり、現実に影響を与えるような試みがなされるのでしょうか。
 
 おわりに。毎年書いていることですが、占星術とは星の配置によって地上の運勢を読みとる術です。しかしそれは「星の配置に地上の運勢が左右される」ことではありません。地上の動きを知らなければ、天を仰いでも何もわかりません。私の師同然であったルル・ラブアさんは、「新聞を読みなさい、勉強しなさい、世の中を知りなさい、でなければマンデーンはできない」とアドバイスをくださいました。占星術を学んだだけで、株で勝てたりはしませんし、政治家の胸の内がわかったりはしません。占星術は予兆を読みとる1つの方法でしかありません。予兆を読むのがオカルティストですが、オカルティストは占い師であるとは限りません、科学者、政治家、そして芸術家もまた、予兆を探そうとするオカルティストです。
 ただし、オカルト理論にはおおいなる勘違いもたくさん含まれています。99の瓦礫とたった1つの原石。そのぐらいの比率かとは思いますが、マンデーンから役立つ何かをひとつでも読みとっていただければ幸いです。
 
(注・この記事は「秋月さやか占星幻想館」と「月と星の占いメッセージ」に同内容を掲載しています。)

秋月さやか

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